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保育士不足の統計データ:2024年有効求人倍率3.54倍と102万人の潜在保育士

2026年1月13日

日本の保育現場では深刻な人手不足が続いています。保育士の有効求人倍率は全職種平均の3倍以上、保育士資格を持ちながら保育の仕事に就いていない「潜在保育士」は102万人にのぼります。本記事では、厚生労働省やこども家庭庁の統計データをもとに、保育士不足の実態、地域別の状況、不足の原因、そして解消に向けた取り組みを詳しく解説します。

目次

  • 保育士不足の現状:有効求人倍率の高さ
  • 2024年の有効求人倍率
  • 有効求人倍率の推移
  • 有効求職者数の減少
  • 保育士登録者数と従事者数の乖離
  • 167万人の登録者、64万人の従事者
  • 潜在保育士の増加
  • 保育所の定員充足率と施設数
  • 2024年の保育施設の状況
  • 保育士確保ができず定員割れの実態
  • 都道府県別の保育士有効求人倍率
  • 2024年1月時点の都道府県別データ
  • 地域的特徴
  • 保育士不足の主な原因
  • 1. 給与水準の低さ
  • 2. 労働環境の厳しさ
  • 3. 社会的評価の低さ
  • 4. キャリアパスの不明確さ
  • 5. 女性の職場環境
  • 保育士不足による影響
  • 待機児童問題への影響
  • 保育の質の低下リスク
  • 保育料の上昇圧力
  • 国の保育士不足対策
  • 1. 処遇改善
  • 2. 保育士確保のための施策
  • 3. 業務負担軽減
  • 自治体独自の取り組み
  • 東京都の事例
  • 横浜市の事例
  • 福岡市の事例
  • 保育園・事業者の取り組み
  • 処遇改善の事例
  • 職場環境改善
  • キャリアパスの明確化
  • 保育士不足解消に向けた課題
  • 短期的課題
  • 中長期的課題
  • 今後の展望:2030年に向けて
  • 必要な保育士数の予測
  • 保育士確保の目標
  • 実現のためのロードマップ
  • まとめ:保育士不足の現状と解決に向けて

保育士不足の現状:有効求人倍率の高さ

2024年の有効求人倍率

厚生労働省の「一般職業紹介状況」によると、保育士の有効求人倍率は以下のように推移しています:

2024年(令和6年):

  • 1月時点: 3.54倍
  • 4月時点: 2.42倍
  • 年間平均: 約2.5-3.0倍

全職種平均との比較:

  • 全職種平均(2024年4月): 1.18倍
  • 保育士(2024年4月): 2.42倍
  • 全職種の約2倍以上

この数字は、1人の保育士を2~3つの保育施設が奪い合っている状況を示しています。

有効求人倍率の推移

過去の推移:

  • 2013年: 1.51倍
  • 2015年: 2.18倍
  • 2017年: 2.76倍
  • 2019年: 3.86倍
  • 2020年: 2.94倍(コロナ禍の影響)
  • 2021年: 2.04倍
  • 2022年: 2.44倍
  • 2023年: 2.89倍
  • 2024年1月: 3.54倍

2019年に3.86倍でピークを迎えた後、コロナ禍で一時的に低下しましたが、2024年には再び3.54倍まで上昇しています。

有効求職者数の減少

有効求職者数の推移:

  • 令和5年(2023年)1月: 16,041人
  • 令和6年(2024年)1月: 13,819人
  • 減少数: 2,222人(▲13.8%)

保育士として求職する人自体が減少しており、人手不足がさらに深刻化しています。

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保育士登録者数と従事者数の乖離

167万人の登録者、64万人の従事者

厚生労働省の統計(令和2年度)によると:

  • 保育士登録者数: 約167万3,000人
  • 実際の保育士従事者数: 約64万5,000人
  • 潜在保育士: 約102万8,000人

つまり、保育士資格を持ちながら保育の仕事に就いていない人が全体の約62%にも上ります。

潜在保育士の増加

潜在保育士の推移:

  • 平成27年(2015年): 約85万人
  • 令和2年(2020年): 約102万人
  • 5年間で約17万人増加

保育士資格を取得しても、保育現場で働かない、あるいは離職する人が増え続けています。

保育所の定員充足率と施設数

2024年の保育施設の状況

こども家庭庁が2024年9月に公表した「保育所等関連状況取りまとめ(令和6年4月1日)」によると:

保育施設数:

  • 全国: 39,805か所(前年比+216か所)

利用定員数:

  • 全国: 304万4,678人

利用児童数:

  • 全国: 270万4,666人

定員充足率:

  • 88.8%(前年比▲0.3ポイント)

定員充足率が低下している背景には:

  1. 少子化による利用児童の減少
  2. 保育士不足による定員通りの受け入れ困難
  3. 地域間格差の拡大

保育士確保ができず定員割れの実態

施設数と定員は増加しているにもかかわらず、保育士不足により:

  • 定員通りに子どもを受け入れられない施設が増加
  • 定員を持て余す施設が地方で増加
  • 都市部では保育士不足で入所制限が発生

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都道府県別の保育士有効求人倍率

2024年1月時点の都道府県別データ

厚生労働省の統計による、令和6年(2024年)1月時点の都道府県別保育士有効求人倍率:

上位10都府県(保育士不足が深刻):

  1. 栃木県: 7.90倍
  2. 広島県: 6.72倍
  3. 東京都: 4.89倍
  4. 埼玉県: 4.78倍
  5. 愛知県: 4.56倍
  6. 千葉県: 4.42倍
  7. 大阪府: 4.23倍
  8. 神奈川県: 4.12倍
  9. 福岡県: 3.98倍
  10. 兵庫県: 3.85倍

下位5県(比較的保育士確保しやすい): 43. 和歌山県: 1.78倍 44. 鳥取県: 1.77倍 45. 島根県: 1.73倍 46. 山口県: 1.68倍 47. 高知県: 1.63倍

地域的特徴

大都市圏の深刻さ:

  • 東京都: 4.89倍
  • 神奈川県: 4.12倍
  • 埼玉県: 4.78倍
  • 千葉県: 4.42倍

首都圏1都3県は全て4倍以上で、特に保育士不足が深刻です。

地方都市の状況:

  • 中国・四国地方は比較的倍率が低い
  • しかし、絶対的な保育士数は依然不足
  • 待遇改善が進んでいない地域も

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保育士不足の主な原因

1. 給与水準の低さ

厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(令和4年)によると:

平均給与(月額):

  • 保育士: 26万4,000円
  • 全職種平均: 31万1,800円
  • 差額: ▲4万7,800円(約15%低い)

年収換算(賞与含む):

  • 保育士: 約382万円
  • 全職種平均: 約496万円
  • 差額: ▲114万円

経験年数別の給与(月額):

  • 経験1-4年: 23.9万円
  • 経験5-9年: 26.0万円
  • 経験10-14年: 28.2万円
  • 経験15年以上: 30.8万円

他の職種と比べて昇給幅が小さく、ベテランになっても給与が上がりにくい構造です。

2. 労働環境の厳しさ

主な問題点:

長時間労働:

  • 平均残業時間: 月10-20時間(公式統計)
  • 実際は持ち帰り仕事も多い
  • 書類作成、行事準備、保護者対応など

人手不足による負担増:

  • 配置基準ギリギリの運営
  • 休憩時間が取れない
  • 有給休暇の取得困難

身体的負担:

  • 子どもの抱っこ、おんぶ
  • 中腰での作業が多い
  • 腰痛、膝痛などの職業病

精神的負担:

  • 子どもの安全への責任
  • 保護者対応のストレス
  • クレーム対応

3. 社会的評価の低さ

保育士の仕事に対する社会的認識:

  • 専門職としての認識の低さ
  • 「誰でもできる仕事」という誤解
  • 資格の重要性が軽視される

実際の業務の複雑さ:

  • 子どもの発達理解
  • 保育計画の立案
  • 保護者支援
  • 特別な配慮が必要な子への対応
  • 食育、保健衛生

4. キャリアパスの不明確さ

昇進機会の少なさ:

  • 主任保育士: 園に1-2名程度
  • 園長: 園に1名のみ
  • 管理職へのキャリアパスが限定的

スキルアップの機会:

  • 研修参加の時間確保が困難
  • 研修費用の自己負担
  • 資格取得支援の不足

5. 女性の職場環境

保育士の約95%が女性であり、女性特有の課題があります:

出産・育児との両立:

  • 自分の子どもの保育園探し
  • 産休・育休後の復帰困難
  • 時短勤務の取りづらさ

体力的な限界:

  • 妊娠中の身体的負担
  • 年齢を重ねてからの継続困難

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保育士不足による影響

待機児童問題への影響

保育士不足は、待機児童問題の主要因の一つです:

  • 施設はあるが保育士がいないため入所できない
  • 定員まで受け入れられない施設の増加
  • 新規施設開設の困難

保育の質の低下リスク

人手不足による影響:

  • 一人当たりの子ども数増加
  • きめ細かい保育の困難
  • 安全管理のリスク上昇
  • 保育士の疲弊と離職の悪循環

保育料の上昇圧力

保育士の処遇改善のためのコスト増が、保育料上昇につながる懸念があります。

国の保育士不足対策

1. 処遇改善

処遇改善等加算:

  • 加算Ⅰ: 勤続年数や研修実績に応じた加算
  • 加算Ⅱ: 職務分野別リーダー等への加算(月額4万円)
  • 加算Ⅲ: 副主任保育士等への加算(月額5万円)

令和4年度の処遇改善:

  • 給与3%引き上げ(月額9,000円程度)
  • 令和4年2月から実施

累積的な処遇改善:

  • 2013年以降の処遇改善累計: 月額約5万円相当

2. 保育士確保のための施策

保育士修学資金貸付制度:

  • 養成施設に在学する学生への貸付
  • 卒業後5年間保育士として勤務すれば返済免除
  • 貸付額: 月額5万円+入学準備金・就職準備金

潜在保育士の再就職支援:

  • 就職準備金貸付: 40万円
  • 2年間勤務すれば返済免除
  • 研修受講支援

保育補助者雇上支援:

  • 保育士の負担軽減のため
  • 補助者の人件費を補助

3. 業務負担軽減

ICT化の推進:

  • 補助金による導入支援
  • 保育記録のデジタル化
  • 保護者連絡のアプリ化

業務の見直し:

  • 書類の簡素化
  • 行事の精選
  • 働き方改革の推進

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自治体独自の取り組み

東京都の事例

処遇改善:

  • 給与上乗せ補助: 月額8万円程度
  • 宿舎借り上げ支援: 月額8万2,000円まで

効果:

  • 有効求人倍率は依然高いが、他県より保育士確保しやすい状況

横浜市の事例

待機児童ゼロ達成の取り組み(2013年、2017年):

  • 保育施設の大幅増設
  • 保育士確保対策の強化
  • 処遇改善の独自加算

福岡市の事例

保育士確保特別手当:

  • 市独自の給与上乗せ
  • 保育士住宅支援

保育園・事業者の取り組み

処遇改善の事例

給与面:

  • 初任給の引き上げ(月額20万円以上)
  • 賞与の増額(年4ヶ月分以上)
  • 各種手当の充実

働き方改革:

  • ノンコンタクトタイム(保育時間外の業務時間)確保
  • ICT導入による業務効率化
  • シフトの工夫による労働時間削減

職場環境改善

休暇取得の推進:

  • 有給休暇取得率の向上
  • リフレッシュ休暇の導入
  • バースデー休暇など

福利厚生の充実:

  • 退職金制度の整備
  • 健康診断の充実
  • メンタルヘルスケア

キャリアパスの明確化

段階的なキャリアアップ:

  1. 新人保育士
  2. 中堅保育士
  3. 専門リーダー・職務分野別リーダー
  4. 副主任保育士
  5. 主任保育士
  6. 園長

各段階での給与テーブルと必要な研修を明確化

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保育士不足解消に向けた課題

短期的課題

1. 処遇のさらなる改善

  • 全職種平均並みの給与水準の実現
  • 月額5万円程度の追加改善が必要

2. 潜在保育士の活用

  • 再就職支援の強化
  • 短時間勤務の整備
  • ブランクへの不安解消

3. 保育補助者の活用

  • 無資格者でもできる業務の切り分け
  • 保育士の業務負担軽減

中長期的課題

1. 社会的地位の向上

  • 専門職としての認識の定着
  • 保育の重要性の啓発
  • メディアでの肯定的発信

2. 労働環境の抜本的改善

  • 配置基準の見直し
  • 業務量の適正化
  • 持続可能な働き方の実現

3. 養成施設の充実

  • 保育士養成施設の定員充足率向上
  • 質の高い教育の提供
  • 実習体制の充実

4. 男性保育士の増加

  • 現在約5%の男性比率を引き上げ
  • 男性が働きやすい環境整備
  • ロールモデルの提示

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今後の展望:2030年に向けて

必要な保育士数の予測

こども家庭庁の試算では:

  • 2024年の保育士数: 約64万人
  • 2030年の必要数: 約70万人
  • 不足予測: 約6万人

保育士確保の目標

政府は「新子育て安心プラン」で以下を目標としています:

  • 2024年度末までに保育の受け皿を約14万人分整備
  • 必要な保育士の確保: 約4万人

実現のためのロードマップ

~2025年:

  • 処遇改善の継続
  • 潜在保育士の再就職支援強化
  • ICT化の全国展開

2026~2030年:

  • 配置基準の見直し
  • 社会的地位向上の取り組み
  • 持続可能な保育システムの構築

まとめ:保育士不足の現状と解決に向けて

保育士不足は、以下の統計データから深刻な状況にあることが明らかです:

現状の数字:

  • 有効求人倍率: 3.54倍(2024年1月)
  • 潜在保育士: 102万人
  • 実際の従事者: 64万人(登録者の38%)
  • 定員充足率: 88.8%

不足の主な原因:

  1. 給与水準の低さ(全職種平均より月額4.8万円低い)
  2. 労働環境の厳しさ(長時間労働、身体的・精神的負担)
  3. 社会的評価の低さ
  4. キャリアパスの不明確さ
  5. 女性の職場特有の課題

必要な対策:

  • 処遇改善: 月額5万円以上の追加改善
  • 労働環境改善: ICT化、業務効率化、配置基準見直し
  • 潜在保育士活用: 再就職支援、柔軟な働き方
  • 社会的地位向上: 専門職としての認識の定着
  • 男性保育士増: 多様な人材の確保

保育士不足の解消は、待機児童問題の解決、少子化対策の推進、そして子どもたちの健やかな成長のために不可欠です。国・自治体・事業者・社会全体での継続的な取り組みが求められています。


参考情報出典:

  • 厚生労働省「一般職業紹介状況」(令和6年)
  • 厚生労働省「保育士の現状と主な取組」
  • こども家庭庁「保育所等関連状況取りまとめ(令和6年4月1日)」
  • 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(令和4年)
  • 内閣府「子ども・子育て支援新制度」関連資料
  • 各自治体の保育士確保対策資料

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