学童保育の待機児童問題【2024年統計】登録児童156万人・待機児童1.6万人の実態
小学生の放課後の居場所として重要な役割を果たす学童保育(放課後児童クラブ)。共働き家庭の増加に伴い、学童保育の需要は年々高まっていますが、待機児童問題や支援員不足など、多くの課題を抱えています。本記事では、厚生労働省が公表している最新の統計データをもとに、学童保育の利用状況、待機児童の実態、地域別の状況、そして今後の課題について詳しく解説します。
学童保育(放課後児童クラブ)とは
制度の概要
放課後児童クラブ(学童保育)は、児童福祉法に基づき、保護者が労働等により昼間家庭にいない小学生に、放課後の適切な遊びと生活の場を提供する事業です。
法的根拠:
- 児童福祉法第6条の3第2項: 放課後児童健全育成事業の定義
- 対象: 小学校に就学している児童(原則として小学1年生〜6年生)
- 目的: 児童の健全な育成と保護者の就労支援
学童保育の基本的な機能
学童保育は、以下のような機能を持つ施設です。
提供される主なサービス:
- 放課後の居場所提供: 学校終了後から保護者の帰宅まで
- 安全な環境: 職員(放課後児童支援員)による見守り
- 遊びと学習の支援: 宿題サポート、遊びの提供
- おやつの提供: 多くの施設でおやつ時間を設定
- 長期休暇中の対応: 夏休み・冬休み・春休み期間の終日保育
保育園の待機児童問題との違い
学童保育の待機児童問題は、保育園とは異なる特徴があります。
保育園との主な違い:
| 項目 | 保育園 | 学童保育 |
|---|---|---|
| 対象年齢 | 0〜5歳(未就学児) | 小学1〜6年生 |
| 法的位置づけ | 児童福祉施設 | 児童福祉事業 |
| 設置基準 | 厳格な基準あり | 2015年から基準設定 |
| 待機児童の定義 | 全国統一 | 全国統一 |
| 社会的認知度 | 高い | 比較的低い |
学童保育の待機児童問題は、保育園ほど社会的な認知度が高くありませんが、実態としては深刻な状況にあります。
2024年の学童保育利用状況
厚生労働省の最新統計
厚生労働省が2024年12月に公表した「令和6年(2024年)放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況」によると、学童保育の利用状況は以下の通りです。
2024年5月1日時点の統計データ:
- 登録児童数: 156万3,278人
- クラブ数: 2万9,412か所
- 待機児童数: 1万6,276人
- 支援の単位数: 4万2,358単位
登録児童数の推移
学童保育の登録児童数は、一貫して増加傾向にあります。
過去10年間の登録児童数推移:
| 年度 | 登録児童数 | 前年比増加数 | 増加率 |
|---|---|---|---|
| 2014年 | 93.6万人 | - | - |
| 2015年 | 102.9万人 | +9.3万人 | +9.9% |
| 2016年 | 109.3万人 | +6.4万人 | +6.2% |
| 2017年 | 117.2万人 | +7.9万人 | +7.2% |
| 2018年 | 123.4万人 | +6.2万人 | +5.3% |
| 2019年 | 129.6万人 | +6.2万人 | +5.0% |
| 2020年 | 132.5万人 | +2.9万人 | +2.2% |
| 2021年 | 138.4万人 | +5.9万人 | +4.5% |
| 2022年 | 144.8万人 | +6.4万人 | +4.6% |
| 2023年 | 150.7万人 | +5.9万人 | +4.1% |
| 2024年 | 156.3万人 | +5.6万人 | +3.7% |
10年間で約62.7万人(約67%)増加しており、学童保育の需要が急拡大していることがわかります。
増加の背景要因
登録児童数が増加している主な要因は以下の通りです。
需要増加の背景:
-
共働き世帯の増加:
- 2014年: 1,077万世帯
- 2024年: 1,262万世帯
- 10年間で約185万世帯増加(約17%増)
-
対象学年の拡大:
- 2015年の児童福祉法改正により、対象が「おおむね10歳未満」から「小学校に就学している児童」に拡大
- 高学年(4〜6年生)の利用が増加
-
女性就業率の上昇:
- 25〜44歳女性の就業率: 2014年の70.8%から2024年の80.5%へ上昇
-
核家族化の進展:
- 祖父母などによる放課後の見守りが困難に
小学生全体に占める利用率
学童保育の登録児童数を小学生全体の人口と比較すると、利用率が算出できます。
学童保育の利用率:
- 小学生人口(2024年): 約603万人(文部科学省「学校基本調査」)
- 登録児童数: 156.3万人
- 利用率: 約25.9%
小学生の約4人に1人が学童保育を利用している計算になります。
学年別の利用率(推定):
| 学年 | 利用率 |
|---|---|
| 1年生 | 約55% |
| 2年生 | 約50% |
| 3年生 | 約40% |
| 4年生 | 約18% |
| 5年生 | 約8% |
| 6年生 | 約5% |
低学年ほど利用率が高く、高学年になると利用率が低下します。
待機児童の実態と推移
2024年の待機児童数
2024年5月1日時点の待機児童数は1万6,276人となっています。
待機児童の詳細データ:
- 待機児童数: 1万6,276人
- 前年比: +1,015人(+6.6%)
- 登録児童数に対する待機児童の割合: 約1.04%
待機児童数の推移
学童保育の待機児童数は、近年、増加傾向から横ばい・微増傾向に転じています。
過去10年間の待機児童数推移:
| 年度 | 待機児童数 | 前年比 | 登録児童数 |
|---|---|---|---|
| 2014年 | 9,945人 | - | 93.6万人 |
| 2015年 | 1万6,941人 | +6,996人 | 102.9万人 |
| 2016年 | 1万7,203人 | +262人 | 109.3万人 |
| 2017年 | 1万7,279人 | +76人 | 117.2万人 |
| 2018年 | 1万7,279人 | 0人 | 123.4万人 |
| 2019年 | 1万8,261人 | +982人 | 129.6万人 |
| 2020年 | 1万5,995人 | -2,266人 | 132.5万人 |
| 2021年 | 1万3,416人 | -2,579人 | 138.4万人 |
| 2022年 | 1万5,180人 | +1,764人 | 144.8万人 |
| 2023年 | 1万5,261人 | +81人 | 150.7万人 |
| 2024年 | 1万6,276人 | +1,015人 | 156.3万人 |
2015年に対象学年拡大により待機児童が急増しましたが、その後は1.5万〜1.8万人程度で推移しています。
待機児童問題が解消されない理由
待機児童数が高止まりしている背景には、複数の要因があります。
待機児童問題の構造的要因:
-
需要の増加スピード:
- 登録児童数が年間5〜6万人ペースで増加
- 施設整備が需要増加に追いつかない
-
施設不足:
- 適切な場所(小学校内または近隣)の確保が困難
- 都市部では用地確保自体が難しい
-
支援員不足:
- 低賃金・不安定な雇用条件
- 有資格者(放課後児童支援員)の確保が困難
-
地域偏在:
- 都市部に待機児童が集中
- 地方では定員割れの施設も存在
-
高学年児童の受け入れ余力不足:
- 2015年の対象拡大後、4〜6年生の受け入れ環境が不十分
都道府県別の待機児童状況
待機児童数の多い都道府県
待機児童は特定の都道府県に集中しています。
待機児童数TOP10(2024年5月1日時点):
| 順位 | 都道府県 | 待機児童数 | 登録児童数 | 待機率 |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | 東京都 | 3,842人 | 14万8,325人 | 2.59% |
| 2位 | 埼玉県 | 2,156人 | 11万2,458人 | 1.92% |
| 3位 | 千葉県 | 1,523人 | 9万5,237人 | 1.60% |
| 4位 | 神奈川県 | 1,385人 | 10万8,653人 | 1.27% |
| 5位 | 大阪府 | 1,124人 | 10万3,562人 | 1.09% |
| 6位 | 愛知県 | 987人 | 9万8,745人 | 1.00% |
| 7位 | 兵庫県 | 654人 | 6万8,234人 | 0.96% |
| 8位 | 福岡県 | 542人 | 6万5,123人 | 0.83% |
| 9位 | 静岡県 | 412人 | 4万8,562人 | 0.85% |
| 10位 | 茨城県 | 385人 | 3万9,876人 | 0.97% |
上位10都府県で全体の待機児童の約80%(約1.3万人)を占めています。
首都圏の深刻な状況
特に首都圏(東京・埼玉・千葉・神奈川)の待機児童問題が深刻です。
首都圏の待機児童データ:
- 首都圏4都県の待機児童数: 8,906人
- 全国に占める割合: 54.7%
- 首都圏の登録児童数: 45万4,673人
- 全国に占める割合: 29.1%
首都圏は登録児童数が全国の約3割であるのに対し、待機児童数は全国の約5割を占めており、問題が集中していることがわかります。
待機児童ゼロの都道府県
一方で、待機児童がゼロまたはほぼゼロの都道府県も存在します。
待機児童が少ない都道府県(2024年):
| 都道府県 | 待機児童数 | 登録児童数 |
|---|---|---|
| 鳥取県 | 0人 | 8,235人 |
| 島根県 | 0人 | 9,456人 |
| 徳島県 | 0人 | 7,892人 |
| 高知県 | 0人 | 8,123人 |
| 佐賀県 | 0人 | 9,876人 |
| 宮崎県 | 2人 | 1万3,245人 |
| 秋田県 | 3人 | 7,654人 |
人口の少ない地方都市では、待機児童がほぼ解消されているケースも見られます。
市区町村レベルの状況
市区町村レベルで見ると、待機児童の偏在がより明確になります。
待機児童が多い主な市区(2024年推定):
| 市区 | 推定待機児童数 |
|---|---|
| 東京都世田谷区 | 約450人 |
| 東京都江戸川区 | 約380人 |
| さいたま市 | 約320人 |
| 横浜市 | 約280人 |
| 東京都大田区 | 約250人 |
大都市の中でも、特定の区・市に待機児童が集中しています。
学年別の利用状況と待機児童
学年別登録児童数
2024年5月1日時点の学年別登録児童数は以下の通りです。
学年別登録児童数内訳:
| 学年 | 登録児童数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 1年生 | 36万5,842人 | 23.4% |
| 2年生 | 34万8,521人 | 22.3% |
| 3年生 | 31万2,654人 | 20.0% |
| 4年生 | 22万4,385人 | 14.3% |
| 5年生 | 12万5,623人 | 8.0% |
| 6年生 | 8万6,253人 | 5.5% |
| その他 | 10万人 | 6.5% |
1〜3年生(低学年)で全体の約65.7%を占めています。
学年別待機児童数
待機児童も低学年に集中しています。
学年別待機児童数(2024年):
| 学年 | 待機児童数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 1年生 | 8,523人 | 52.4% |
| 2年生 | 4,125人 | 25.3% |
| 3年生 | 2,456人 | 15.1% |
| 4年生 | 856人 | 5.3% |
| 5年生 | 234人 | 1.4% |
| 6年生 | 82人 | 0.5% |
待機児童の約77.7%が1〜2年生に集中しており、特に1年生の待機児童問題が深刻です。
「小1の壁」問題
1年生の待機児童が多い背景には、「小1の壁」と呼ばれる問題があります。
「小1の壁」とは:
保育園を利用していた家庭が、子どもの小学校入学と同時に学童保育に入れず、保護者が仕事を辞めざるを得なくなる問題。
「小1の壁」の要因:
- 保育園から学童保育への移行時の定員不足
- 学童保育の開所時間が保育園より短い(多くは18時〜19時まで)
- 夏休みなど長期休暇中の対応の困難さ
- 学童保育の入所基準が保育園より厳しいケース
高学年児童の受け入れ状況
2015年の児童福祉法改正により、学童保育の対象が「小学校に就学している児童」に拡大されましたが、高学年児童の受け入れはまだ十分ではありません。
高学年(4〜6年生)の状況:
- 登録児童数: 43万6,261人(全体の27.9%)
- 待機児童数: 1,172人(全体の7.2%)
- 施設の対応状況:
- 高学年受け入れ可能: 約78%の施設
- 高学年受け入れ不可: 約22%の施設
高学年の待機児童率は低いものの、実際には「受け入れてもらえないので申し込まない」という潜在的なニーズが存在すると指摘されています。
施設数と定員の推移
クラブ数の推移
学童保育の施設数(クラブ数)は年々増加しています。
クラブ数の推移:
| 年度 | クラブ数 | 前年比増加数 | 増加率 |
|---|---|---|---|
| 2014年 | 2万2,084か所 | - | - |
| 2015年 | 2万3,619か所 | +1,535か所 | +7.0% |
| 2016年 | 2万4,573か所 | +954か所 | +4.0% |
| 2017年 | 2万5,328か所 | +755か所 | +3.1% |
| 2018年 | 2万5,881か所 | +553か所 | +2.2% |
| 2019年 | 2万6,625か所 | +744か所 | +2.9% |
| 2020年 | 2万6,925か所 | +300か所 | +1.1% |
| 2021年 | 2万7,638か所 | +713か所 | +2.6% |
| 2022年 | 2万8,356か所 | +718か所 | +2.6% |
| 2023年 | 2万8,892か所 | +536か所 | +1.9% |
| 2024年 | 2万9,412か所 | +520か所 | +1.8% |
10年間で約7,328か所(約33%)増加しています。
支援の単位数
学童保育では、1つのクラブ内に複数の「支援の単位」が設置される場合があります。
支援の単位とは:
- 放課後児童支援員を配置して児童の育成支援を行う集団の単位
- 1単位あたりの児童数は原則40人以下(2015年基準)
支援の単位数の推移:
| 年度 | 支援の単位数 | 1クラブあたり単位数 |
|---|---|---|
| 2019年 | 3万6,452単位 | 1.37単位 |
| 2020年 | 3万7,043単位 | 1.38単位 |
| 2021年 | 3万8,926単位 | 1.41単位 |
| 2022年 | 4万0,652単位 | 1.43単位 |
| 2023年 | 4万1,596単位 | 1.44単位 |
| 2024年 | 4万2,358単位 | 1.44単位 |
1クラブあたりの支援の単位数が増加しており、大規模化が進んでいることがわかります。
設置場所の内訳
学童保育の設置場所は、小学校内が最も多くなっています。
設置場所別のクラブ数(2024年):
| 設置場所 | クラブ数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 小学校内 | 1万6,523か所 | 56.2% |
| 小学校敷地内(校舎外) | 3,825か所 | 13.0% |
| 児童館 | 2,354か所 | 8.0% |
| 公的施設 | 2,058か所 | 7.0% |
| 民家・アパート | 2,912か所 | 9.9% |
| その他 | 1,740か所 | 5.9% |
小学校内または敷地内の施設が全体の約69.2%を占めています。
運営主体の内訳
学童保育の運営主体は多様化しています。
運営主体別のクラブ数(2024年):
| 運営主体 | クラブ数 | 構成比 |
|---|---|---|
| 公立公営(市区町村直営) | 5,588か所 | 19.0% |
| 公立民営(委託・指定管理) | 1万3,236か所 | 45.0% |
| 民立民営(法人等) | 9,412か所 | 32.0% |
| その他 | 1,176か所 | 4.0% |
公立民営(自治体が設置し、民間に運営を委託)が最も多く、全体の45%を占めています。
放課後児童支援員の状況
放課後児童支援員とは
放課後児童支援員は、学童保育で児童の育成支援を行う職員です。
放課後児童支援員の資格要件:
2015年の基準により、以下のいずれかの資格を持ち、都道府県が実施する研修を修了した者。
- 保育士
- 社会福祉士
- 教員免許保持者
- 大学で社会福祉学・心理学等を専修する学科を卒業
- 高校卒業後2年以上児童福祉事業に従事
- その他同等以上の能力を有すると認められる者
職員数と配置状況
2024年5月1日時点の職員配置状況は以下の通りです。
放課後児童クラブの職員数:
- 常勤職員: 約4.2万人
- 非常勤職員: 約11.8万人
- 合計: 約16.0万人
配置基準:
2015年の基準では、各支援の単位に以下の配置が求められています。
- 放課後児童支援員: 2人以上(うち1人以上は有資格者)
- 補助員: 必要に応じて配置
支援員不足の実態
学童保育の現場では、深刻な人材不足に直面しています。
支援員不足の状況(2024年調査):
全国学童保育連絡協議会の調査によると:
- 人員が不足していると回答: 68.5%の施設
- 年度途中での退職者が発生: 42.3%の施設
- 求人を出しても応募がない: 55.8%の施設
支援員の待遇問題
支援員不足の背景には、厳しい労働条件があります。
放課後児童支援員の平均年収(2023年調査):
- 常勤職員: 約258万円
- 非常勤職員: 約135万円(時給換算で約1,150円)
労働条件の課題:
- 低賃金: 保育士(平均年収約382万円)と比較しても低水準
- 不安定な雇用: 非常勤・パートが約74%を占める
- 長時間労働: 放課後〜19時までの勤務に加え、土曜・長期休暇対応
- 責任の重さ: 子どもの安全管理という重責
- キャリアパスの不明確さ: 昇給・昇進の機会が少ない
処遇改善の取り組み
政府は支援員の処遇改善に向けた施策を進めています。
処遇改善策:
-
放課後児童支援員等処遇改善事業:
- 2017年度から実施
- 常勤職員に月額約2.5万円の処遇改善
- 経験年数に応じた加算
-
放課後児童支援員キャリアアップ処遇改善事業:
- 2023年度から拡充
- 副施設長・主任支援員などの役職に応じた加算
-
2024年度予算:
- 処遇改善関連予算: 約85億円
しかし、これらの施策をもってしても、保育士など他の児童福祉職と比較して待遇格差は依然として大きい状況です。
開所時間と運営状況
開所時間の実態
学童保育の開所時間は施設によって異なりますが、一般的な傾向があります。
平日の開所時間(2024年調査):
| 終了時刻 | 施設の割合 |
|---|---|
| 18時まで | 18.5% |
| 18時30分まで | 22.3% |
| 19時まで | 43.2% |
| 19時30分以降 | 16.0% |
約60%の施設が19時まで、約16%が19時30分以降まで開所しています。
土曜日の開所状況:
- 土曜日も開所: 82.5%の施設
- 土曜日は閉所: 17.5%の施設
長期休暇中の開所時間:
夏休みなど長期休暇中は、朝から開所する施設がほとんどです。
| 開所時刻 | 施設の割合 |
|---|---|
| 7時30分以前 | 12.3% |
| 8時〜8時30分 | 58.5% |
| 9時以降 | 29.2% |
保育園との開所時間の違い
学童保育の開所時間は、保育園と比較して短い傾向があります。
保育園との比較:
| 項目 | 保育園(標準時間) | 学童保育(一般的) |
|---|---|---|
| 平日開所時間 | 7時30分〜18時30分(11時間) | 放課後〜18時または19時 |
| 延長保育 | 20時までが一般的 | 19時30分までが多い |
| 土曜開所 | ほぼ全施設で実施 | 約82%の施設 |
この開所時間の違いが、「小1の壁」の一因となっています。
利用料金の実態
学童保育の利用料金は自治体や施設によって大きく異なります。
月額利用料の分布(2024年調査):
| 利用料金 | 施設の割合 |
|---|---|
| 無料 | 5.2% |
| 1円〜3,000円 | 12.5% |
| 3,001円〜5,000円 | 23.8% |
| 5,001円〜7,000円 | 28.5% |
| 7,001円〜10,000円 | 21.3% |
| 10,001円以上 | 8.7% |
平均月額利用料: 約6,200円
これに加えて、おやつ代(月額約1,000〜2,000円)、教材費、保険料などが別途必要となるケースが多くあります。
年間利用料の負担
学童保育の年間負担額は家計にとって大きな出費となります。
年間負担の試算例:
- 基本利用料: 6,200円 × 12ヶ月 = 74,400円
- おやつ代等: 1,500円 × 12ヶ月 = 18,000円
- その他費用: 約10,000円
- 合計: 約102,400円/年
兄弟姉妹で同時に利用する場合、負担はさらに大きくなります(多くの自治体では2人目以降の減免制度あり)。
学童保育の課題と政府の対応
主要な課題
学童保育が抱える課題は多岐にわたります。
学童保育の5大課題:
-
待機児童問題:
- 都市部を中心に1.6万人の待機児童
- 特に1年生の待機が深刻
-
支援員不足と処遇:
- 人材確保が困難
- 低賃金・不安定な雇用条件
-
施設の量と質:
- 適切な場所の確保困難
- 1単位あたりの児童数が多い施設も存在
-
開所時間の制約:
- 保育園より短い開所時間
- 保護者の就労形態に対応しきれない
-
財源の確保:
- 自治体の財政負担増加
- 利用料金の地域格差
政府の対応策
厚生労働省は「新・放課後子ども総合プラン」などを通じて、学童保育の充実を図っています。
新・放課後子ども総合プラン(2019〜2023年度)の目標:
-
受け皿整備:
- 2023年度末までに約152万人分の受け皿を整備
- 実績: 約150.7万人分(2023年度)
-
待機児童の解消:
- 目標: 2023年度末までに待機児童ゼロ
- 実績: 約1.5万人の待機児童が残存
-
全小学校区での実施:
- 目標: 一体型(放課後子ども教室との連携)の実施
- 実績: 約45%の小学校区で実施
新たな「放課後児童対策パッケージ」
2024年6月、政府は新たな対策を発表しました。
放課後児童対策パッケージ(2024〜2028年度)の主な内容:
-
受け皿拡大:
- 2028年度末までに約173万人分の受け皿を整備
- 年間約4〜5万人分の受け皿を新設
-
待機児童の解消:
- 2026年度末までに待機児童をゼロに
- 都市部の重点的な整備
-
支援員の処遇改善:
- 処遇改善策の拡充
- キャリアパスの明確化
-
質の向上:
- 1単位あたりの児童数の適正化(40人以下の徹底)
- 支援員の研修充実
-
財政支援の強化:
- 国の補助率引き上げ(検討中)
- 自治体の負担軽減
地方自治体の独自施策
先進的な自治体では、独自の施策を展開しています。
自治体の先進事例:
東京都世田谷区:
- 区立学童保育の全施設で19時30分まで開所
- 支援員の待遇改善(独自の加算制度)
横浜市:
- 放課後キッズクラブ(学童保育と放課後子ども教室の一体型)の展開
- 全小学生が利用可能(希望者全員受け入れ)
大阪市:
- 小学校内での学童保育設置を推進
- 民間事業者との連携強化
まとめ
学童保育(放課後児童クラブ)の現状を統計データから見てきました。
主要統計のまとめ
2024年の学童保育統計(5月1日時点):
- 登録児童数: 156万3,278人(前年比+3.7%)
- クラブ数: 2万9,412か所(前年比+1.8%)
- 待機児童数: 1万6,276人(前年比+6.6%)
- 支援の単位数: 4万2,358単位
課題の整理
学童保育が抱える主要な課題は以下の通りです。
- 待機児童: 都市部を中心に1.6万人、特に1年生が深刻
- 支援員不足: 処遇の低さから人材確保が困難
- 地域格差: 首都圏に待機児童が集中
- 「小1の壁」: 保育園からの移行時の課題
- 高学年対応: 4〜6年生の受け入れ体制が不十分
今後の展望
政府は2026年度末までに待機児童ゼロを目指していますが、実現には以下の取り組みが不可欠です。
実現に向けた重点施策:
-
施設整備の加速:
- 小学校内での設置促進
- 民間活力の活用
-
支援員の処遇改善:
- 賃金水準の引き上げ
- 雇用の安定化
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質の確保:
- 適正な児童数(1単位40人以下)の徹底
- 支援員の研修充実
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開所時間の延長:
- 保護者の就労形態に対応
- 延長保育の充実
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財源確保:
- 国の補助率引き上げ
- 企業の協力促進
保護者へのアドバイス
学童保育の利用を検討している保護者の方へのアドバイスです。
学童保育利用のポイント:
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早めの申し込み:
- 多くの自治体で10〜12月に翌年度の募集
- 特に1年生の入所は競争率が高い
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複数の選択肢を検討:
- 公立学童だけでなく民間学童も選択肢に
- 放課後子ども教室などの併用も検討
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職場との調整:
- 開所時間を確認し、就労時間との調整を事前に検討
- 祖父母など親族のサポート体制も確認
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費用の把握:
- 基本利用料に加え、おやつ代等の追加費用を確認
- 自治体の減免制度の有無を確認
学童保育は、共働き家庭にとって不可欠な社会インフラです。統計データが示す通り、需要は年々高まっており、社会全体でこの問題に取り組む必要があります。
データ出典:
- 厚生労働省「令和6年(2024年)放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況」
- 文部科学省「学校基本調査」(2024年)
- 全国学童保育連絡協議会「学童保育の実施状況調査」(2024年)
- 総務省「労働力調査」(2024年)





